天空の蜂 映画感想

dtv配信で視聴。




江口洋介、本木雅弘、綾野剛、仲間由紀恵…etc豪華キャストが集結したパニック・ミステリー。

天空の蜂



原作:東野圭吾
監督:堤幸彦
主演:江口洋介、本木雅弘


錦重工業が自衛隊に納入する予定だった巨大ヘリコプター・ビッグBが何者かによって奪われてしまう。
ビッグBの設計を担当した湯原は、自分の息子がビッグBに取り残されていることを知って救出するべく現地へ向かう。
ビッグBを奪った人物の目的とは、政府を脅迫し日本中の原発全てを破壊・停止させることだった。犯人は目的が達成されなければ福井県の高速増殖炉「新陽」にビッグBを墜落させると脅すが…というお話。


前半はビッグBに取り残された子供の救出、後半ではビッグBの「新陽」への墜落阻止と犯人確保を軸に物語が動いていきます。
主演の2人がいる「新陽」の本部をメイン舞台に据え、漁村で犯人についての聞き込みを行う福井県警の刑事たち、錦重工業の内部を捜査し共犯者を探す愛知県警の刑事たちの様子が間に挟まれる群像劇仕立て。
愛知県警の人たちの名古屋訛りが強すぎるw名古屋であそこまで訛ってる人はあまりお見かけしたことがないです

ビッグBが奪われた序盤から息もつかせぬハラハラ感が高まり、中盤までは地道な捜査や原発の安全のため働く現地作業員の奮闘が描かれる男臭い展開。「新陽」の責任者を演じる國村隼さんが渋い存在感を漂わせています。
前半のクライマックスである高彦くん救出の場面は、困難な状況下での自衛官の救出活動、手に汗握る展開にハラハラドキドキ。緊張感たっぷりに見守る中、若き自衛官の勇敢な行動に涙が出てきました。。

後半では犯人の正体に迫り、ビッグBが「新陽」にぶつかるのを阻止しようとする。
テロリストの男を演じる綾野剛の演技が、追い詰められていく悲壮感と狂気に満ち溢れていて素晴らしかったです。(←これ目当てで見た人)
そして、原発の安全とそこで働く作業員を省みようとしない政府や国民への警鐘。舞台が1995年ということで、原発への意識はまだまだ薄かった時代。犯人が漏らした「世の中にはないと困るが見たくないってもんがある」という皮肉に満ちた台詞…それこそがこの物語の軸であり、世間に突き付けたかったこと。
原発問題に限らず、見たくないものに蓋をせず向き合うことができるか?という問題提起。それはとても難しい問題に思えますが、「狂っているのは誰か」という犯人の台詞が胸に刺さります。

この作品は「家族、親子」もテーマに据えられておりそメインとなるのが主人公の湯原とその家族。
なんですが、息子の高彦くんとの関係改善と父親として成長する湯原の姿は良かったんですが、奥さんに関しては感じ悪すぎて感情移入できなかった…そこまでに至る経緯を考えれば無理もないのかもしれないけど、子供の前であんなにギスギスしなくても
高彦くんに関しては友達を助けることを優先させたり、あんな状況で子供ながらに果敢に行動したりと色々凄かった。。
ビッグBがコックピット全開で飛んでいるので「風圧で飛ばされたりしないのかな?」とヒヤヒヤものでした。

残念だったのは、犯人サイドの掘り下げが不十分でこれだけの事件を起こした行動理念が一部曖昧なまま終わってしまったことですね。分からないことが多すぎてモヤっとしました。。

以下、ネタバレ感想です。










ビッグBを盗んだ犯人である雑賀。タイトルコールも彼が行っており、ラスボス的な立ち位置かと思っていたらまさかの途中退場にはビックリ!えっ、そこで死んじゃうのと呆気に取られてしまいました。
追い詰められてからの鬼気迫る逃走劇がとにかく凄まじかった。。
部屋を爆破させ多数の自衛官と警官を吹き飛ばし、足を撃たれながらも若手警官をナイフで刺し、それでも追ってきた警官を必死で振り切ろうとしながらもこのままでは無理だと悟ると自らの指を切り落として手錠からすり抜ける。最後はトラックに撥ねられるという何とも無残な死に方…。
追いかける若手警官・関根の意地でも逃がさないという執念も凄かった。。上司に雑さを嘆かれていた序盤とは見違えたように警察官としての使命と覚悟に満ちた強い眼差し。
捜査を通して、やっと上司に認められ始めたところで命を落としてしまう関根についてもショックでした。。最後の方で奥さんと子供が泣いているのも悲しい。

しかし、雑賀が死んでもビッグBは止まらない。
雑賀は誰かと連絡を取っているような描写があったので他に仲間がいるということは分かっていましたが、その共犯が後半では明らかに!
なりますが、ネタ晴らしがサラッとしていたので「え…あ、そうだったんだ」と驚きが薄かったのが残念ネタ晴らしがちょっと分かりにくいというか、いきなり男女の関係を見せられても唐突すぎて戸惑う
原発の設計者である三島が共犯者というか黒幕であったことが明らかになりますが、湯原とは対照的な静かな落ち着きが前半では頼もしく見えていたのにここに来てその冷静さが一気に狂気じみて見えてくるのが凄い。
特に、湯原に銃口を向けられたシーンでは自ら銃を顔に押し付けて危険極まりない状況を作っているというのにあんなにも冷静なのが恐ろしい。これが静かな狂気というものかと、その迫力に息を呑みました。

一連の事件の犯人は、三島と雑賀、共犯者の赤嶺の3人であることが分かりましたが、三島はともかく雑賀と赤嶺に関しては曖昧な情報が多すぎる。この辺はもう原作を読むしかなさそうですね。
雑賀は航空自衛官(空井二尉ではない)だった過去を持ち、クーデターを起こそうとしてクビになったようですがそのクーデターはどういうものだったのか?自衛官時代にどういう扱いを受けていたのか?
また、退職後に原発の床を拭く仕事をしておりそこで友人と同じように白血病にかかったと思われ(大きな痣があったり、一部髪が抜けているような描写があった)そのことも事件を起こした引き金になったのでは?思ったけど、そのことについては特に触れられず終い。もっと彼の心情について掘り下げて欲しかったです。
また、赤嶺は震災で両親を亡くしたという設定については触れられていましたが手首にあった大きな傷(リストカット?)や、三島に「俺と同じ目をしている」と言われたことについての説明はなし。彼女がどういう背景を持ち、どういう思いで三島に協力したのかも知りたかったです。
あと、三島は赤嶺と男女の関係にあったみたいだけど奥さんとは離婚した?それとも不倫?あんなことがあったので奥さんがまだ存命かどうか怪しいですが…。

三島の動機は原発をどうこうよりも「不気味な仮面を付けた群衆」へ「蜂の一刺し」で一矢報いるという意味合いが強かったように感じました。いじめに苦しむ息子を見殺しにした群衆への復讐。
「本当に狂っているのは誰か」の答えは、今の世の中身に染みて分かっている…。
民衆を欺いた政府、そして無関係を決め込む群衆…。この情報化社会に生きていると日々人間の狂気というものを感じる。そして自分もそんな群衆の1人。
原発に関しては、今なら危険性についても浸透してきているし反対の声も大きくなってきている気がします。
ただ反対派の過激な運動が、原発設計者の息子というだけで直接関わりのない子供を追い詰めてしまったというのがこの作品における事件の発端。正論も正義も、行きすぎると時として理不尽な暴力となる。だからといって、安全な所にいて何の影響も受けない人間が当事者である被災者や関係者を無責任に批判するのも違うと思う。
要は、想像力の問題なのかなと。誰もが「もし自分が〇〇の立場だったら~」という想像力を持てるようになれば世の中もう少し平和的になるんじゃないかな?と思います。たぶんもう手遅れなんじゃないかとも思うけど。

映画のラストでは成長して大人になった高彦が自衛隊となり3.11の被災処理にあたる様子が描かれています。
三島の獄中死を知らせた後で、「この国は救う価値があるのか」と口にする湯原はの心中やいかに。時が立って三島の言っていたことが分かるようになったのか、彼を偲ぶ気持ちがその思想に共鳴したのか。
しかし高彦は迷いのない笑顔で国民を守っていく意志を表明する。少年時代に自衛官に命懸けで助けられた高彦にとっては、自分も同じように人命を守るということがせめてもの恩返しだという気持ちがあるのかもしれません。いずれにせよ、人間を「群衆」としてでなく「個人」としてシンプルに考え動く高彦の姿は清々しく、この物語の救いとなっていました。

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